房地合一税(中国語:房地合一税Fang2Di4He2Yi1Shui4)は日本の譲渡所得税に相当する国税です。比較的に新しい税制で、民国105年(2016年)1月1日より施工されています。それ以前には、財産交易所得税(通称、財交税)が適用されていたので、それに替わる税制となります。
ここで注意が必要なのは、房地合一税が適用されてから数年が経っていますが、未だに不動産売買に対する所得課税には、房地合一税ではなく財交稅が使われている点です。現時点では、購入と売却の時期により、房地合一税と財交稅の使い分けが行われており、以下の通りに分類されます。
A. 2016年1月1日以後に購入と売却があった場合➡房地合一税を適用
B. 2016年1月1日前に購入、2016年1月1日以後に売却があった場合➡財交稅を適用
現状では、2016年1月1日前に購入された物件が売却されるケースが圧倒的に多く、2022年の段階でも90%が財交稅適用、10%が房地合一税適用となっています。今後は、時が経つに連れ、房地合一税が適用される取引が増えていきますが、財交稅についても簡単な説明をしておくことにします。
財交税の税率は、他の所得と併せて総合所得税として、課税がされますが、一般的に房地合一税よりも納める税額は低くなります。その理由は、房地合一税が土地・建物の両方に課税されるのに対し、財交税は建物にしか課税されないためです。一般的に(特に台湾においては)地価は時間の経過とともに上昇しますが、建物の価値は逆に下落します。売却時には、固定資産税評価額も低くなっているため、譲渡利益が出ない、または出ても少額な場合がほとんどです。結果的に税率が同じでも課税標準となる額が低くなるため、税額も少なくて済むわけです。実際にはこれから台湾で不動産を購入する場合には必ず房地合一税が適用されるため、現時点で不動産を所有していない方は、財交税を理解しておく必要はありませんが、過渡期としてこれからの何十年間は使われていくので、頭の片隅にこのような税制があることはいれておいてもいいでしょう。
それでは、ここからは本題である房地合一税を説明しています。財交税に比べて、納税額は増えるため実質的な増税としての側面が強いです(実際には様々な特例があるため一概には言えませんが…)。特に外国人に対しては、非常に高い税率が設定されているため、投資としての不動産購入を考える際には、非常に重大なファクターとなります。
房地合一税の算出方法は以下の通りとなります。地価税や房屋税は政府の公表する公告地価や公告現値を基にして算出してきましたが、房地合一税の場合は実際の取引価格(市場価格)を基に計算します。
★房地合一税=(売却価格-購入価格-購入時費用※①-売却時費用※②-土地漲価総数額※③)×税率
① 購入時費用 |
不動産購入時にかかった費用で、仲介費・司法書士報酬・契税(登録免許税)・印花税(印紙税)・公証費用などです。 |
② 売却時費用 |
不動産の売却時にかかった費用で、仲介費・広告費・清掃費・引っ越し費用・司法書士報酬などです。さらには不動産の価値を増加させるために要した費用のうち2年以内に消耗しないものも計上することが出来ます。具体的には、容積率移転費や修繕費、リフォーム代の一部が対象となります。領収書があればその総額、なければ購入価格の3%(30万元上限)として申告ができます。 |
③ 土地漲価総数額 |
土増税の課税標準です。土増税との二重課税を防ぐための措置です。 |
次に税率は以下のようになります(2021年7月1日から始まった。房地合一税2.0の場合)。
台湾国内居住者 |
台湾国内非居住者 |
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適用税率 |
保有期間 |
適用税率 |
保有期間 |
45% |
2年以内 |
45% |
2年以内 |
35% |
2年超5年以内 |
35% |
2年超 |
20% |
5年超10年以内 |
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15% |
10年超 |
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国内法人 |
国外法人 |
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45% |
2年以内 |
45% |
2年以内 |
35% |
2年超5年以内 |
35% |
2年超 |
20% |
5年超 |
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※台湾国内非居住者とは台湾国籍・外国人を問わず、契約締結をした年に183日以上台湾国内に滞在していたものを指します。契約時点ですでにその年に183日以上台湾に滞在していれば直接に台湾国内居住者の税率が適用されます。契約時点ではまだ183日滞在しておらず、後に183日を満了した場合には還付請求が出来ます。
計算式と税率が分かったので、次は具体的に例を挙げてみましょう。
【事例】
・売却価格:2000万元
・購入価格:1000万元
・購入時費用:30万元
・売却時費用:70万元
・土地漲価総数額:100万元
・保有年数:6年
・台湾国内居住者
房地合一税=(2000万-1000万-30万-70万-100万)×20%➡160万元
これを契約後30日以内に申告して納税しなければなりませんが、ご覧の通り、かなりの高額になるため、房地合一税にも自宅に対する優遇税率が設けられています。以下の条件に適合する場合は、税率が一律10%(累進課税の適用もなし)且つ400万元まで非課税となります。
・本人、配偶者、未成年子女のいずれか1人以上の戸籍地になっている
・6年以上連続してその不動産に居住している
・売却前の6年間に賃貸および営業の用に供していない
・本人、配偶者、未成年子女のいずれかは売却前の6年間に本優遇税率を利用していない
非課税枠が大きく、超えても税率は10%と節税効果がとても大きいので、適合する場合はぜひ利用して頂きたい制度です。また、これとは別に房地合一税には買い替え特例の利用も可能となります(別コラムで紹介)。
今回は、日本の譲渡所得税に当たる房地合一税(財交税)の説明をしてまいりました。土増税同様に、うまく特例を利用すれば、節税効果の高い税金なので、しっかりと勉強しておきましょう。その他、不動産の権利移転や保有にかかる税金の紹介もしていますので、興味がある方は、ぜひ別コラムもご覧ください。